ヒロシマ - あるドイツ人の証言

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  DW でドイツ語を学ぶ - 第278回(original) 06. August 2011
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 このシリーズは、DW-WORLD.DE - Deutschkurse - Deutsch XXL -
Deutsch Aktuell - Top-Thema mit Vokabelnのテキストと解説を日本語に
したものです。


 テキストは以下のページにあります。テキストの音声も聞くことができ
ます。


 今日のテキスト
 http://www.dw-world.de/dw/article/0,,5871421,00.html


━━[テキスト試訳]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ヒロシマ - あるドイツ人の証言


 66年前、日本の広島に、最初の原子爆弾が落ちた。ドイツ人神父クラウ
ス・ルーマーは、その投下を現場で目撃した。その恐怖の光景が、記憶、
思い出の中で燃えている。



 1945年8月6日、広島はいつもより暑い日であった。朝早くすでに、
日陰でも 30度になっていた。クラウス・ルーマー神父は、広島のイエズ
ス会の修練院の庭を歩き回り、聖務日課書、教会の祈りを唱えていた。ケ
ルン生まれのその人は、ここに、少し前から住んで宣教師として仕事をし
ていた。突然、彼は、注意深く耳を澄ませた。8時14分、最初は、爆撃機
B29の音かと疑った。「そして、その時、私が、絶対に理解できない、太
陽よりも眩しい、半球状のものが現れた。私は、直感的に、通常の高性能
爆弾だと思った。それは、すぐ近くの山の向こうで爆発した。」


 家は激しく揺れ動いた


 しかし、クラウスが、この朝見たものは、高性能爆弾では決してなかっ
た。原子爆弾の投下だった。4キロメートル離れた広島の中心地上空での。
ルーマーは、庭に避難場所を探した。急いで、階段を駆け下りた。そこは、
家の地下室に通じている。間一髪で、彼は、逃れることができた。「この
明るい光を見た時、熱波が、そして熱風が、私を襲った。家は、激しく揺
れ動いた。瓦が雨のように落ちて来た。窓枠がすべて壊れた。」ルーマー
は、思い出す。


 広島の人々は何も分からなかった


 爆弾の爆発後すぐには、広島の人々は、何が起こったのか分からなかっ
た。それを明らかにするために、クラウス・ルーマーは、家の裏山に登っ
た。その上から、広島の町全体が燃えているのが見えた。さらに事態を観
察することができた。「空は晴れていた。が、突然、黒い雲が広がって来
て、雨が降り始めた。黒い雨だった。灰で色が着いたものだった。」


 ルーマーは、すぐにそこからイエズス会の館に戻った。最初の犠牲者は、
すでに、町からトボトボと歩きだしている。彼らの皮膚は、衣服のように
骨から垂れ下がっていた。一部、衣類の布地は皮膚と融け合っていた。神
父たちは、食事用のテーブルを治療用のテーブルに転用し、それで、負傷
者の処置を始めた。それでも、まだ、彼らは、何が起こったのか分かって
いなかった。彼らには、ただ助けが必要だということしか分からなかった。


 至る所で炎が上がっていた


 何人かの神父は、町に向かった。負傷者の群れが、彼らに近づいて来た。
町は、想像を絶する光景を呈していた。至る所で炎が上がり、家も商店も
崩壊し、瓦礫の間に、死者や負傷者が横たわっていた。「そこに、30人、
40人の半ば焼けた軍服を着た兵士がいた。彼らは、叫んでも喚いてもいな
かった。彼らは、ただ、水、水とだけ叫んでいた。私たちは、彼らを助け
ることができた。なぜなら、すぐそばに泉があったから。私たちは、彼ら
に水を与えることができた。」ルーマーは、話を中断して、声を上げた。
「しかし、一人だけで一体何ができよう? 人々を運ぶには、何十、何百
もの手が必要だった。」


 2日間、一生懸命働いた。その後、日本の軍が、広島を完全に封鎖して、
兵士たちを町に派遣した。「彼らは、私たちに近づいて来た人々の遺体を
瓦礫から取り出し、大きく山積みにするという仕事をした。それから、そ
の上に油を撒き、火をつけた。その人々は、行方不明者とみなされた。」


 原子爆弾を受けた遺体の臭い


 8月8日に、疲れ果てて神父たちは館に戻って来た。そこでは、似た仕
事が彼らを待っていた。近所の、ルーマーがピアノのレッスンをしていた
少女が、彼の前に立っていた。彼女の父親は亡くなった。彼女は、ルーマ
ーに遺体を処分してくれるよう頼んだ。故人の妻が働かなくてもいいよう
に、ルーマーは、火葬のための藁と木材とを用意した。こうして、彼は、
母親と娘との願いを叶えた。「それは、生涯忘れられない臭いであった。
しかし、私は、この原子爆弾をまとも受けた遺体を焼いたときの臭いが、
どのようであったか、誰にも明らかにすることができなかった。」再び、
彼は、話を止めた。声を弱め、ほとんど驚いたような口調で続けた。「そ
して、こうした言葉で言い表せないほどのことすべてに心を閉ざすだろう。
しかし、そうした大惨事の後に、人が、再び、生きる力をいかに取り戻し
て行くか、それは、人間の生命についての魅惑的な話である。なぜなら、
それは、前に、前に向かって進んで行くから。」


 Autorin: Silke Ballweg
 Redaktion: Matthias von Hein


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